おじいちゃん   谷川 俊太郎
おじいちゃんはとてもゆっくりうごく
はこをたなにおきおえたあとも
りょうてがはこのよこにのこっている
しばらくしてそのてがおりてきて
からだのわきにたれる
そのままじっとたっているおじいちゃんは
きゅうになにかをさけびだしそうにみえる
にわのかしのきがまどから
おじいちゃんをのぞきこんでいる
かしのきのいっていることが
おじいちゃんにはきこえているのに
きこえないふりをしているみたい
きのうおふろばでおじいちゃんをみた
ちぢこまったおちんちんがみえた
おじいちゃんおじいちゃんおしえて
むかしのことじゃなくていまのきもち
いまいちばんなにがほしいの
いまいちばんだれがすきなの

▼『はだか 谷川俊太郎詩集』筑摩書房による。
 どんなおじいちゃんだと思いますか。あなたのちかくにいるおじいちゃんやおばあちゃんと語りあってみてください。「ちぢこまったおちんちん」は、おじいちゃんが生きてきた人生を語っているのでしょうか、それともいまの気持ちを示しているのでしょうか。よろこびもかなしみも、内に宿している高齢者との対話を求めたいのです。
人権読本 じんけんの詩(明石書店) 編者 今野敏彦/さし絵 美馬須美子 から

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