わたしと小鳥とすずと   金子 みすゞ


わたしが両手をひろげても、

お空はちっともとべないが、

とべる小鳥はわたしのように、

地面をはやくは走れない。

わたしがからだをゆすっても、

きれいな音はでないけど、

あの鳴るすずはわたしのように、

たくさんなうたは知らないよ。

すずと、小鳥と、それからわたし

みんなちがって、みんないい。

▼人の幸福と不幸は、表裏一体のものなのかもしれません。兵庫・淡路大震災もまた、一瞬にして、幸福な人びとを地獄におくってしまいました。
▼なぜ「まき」が「全身に煮え湯」をあびたのか、その原因は不明ですが、幼い生命が、傷ついたのです。「まき」の泣き声は、傷の痛さに耐えかねたからでしょう。祖母の涙は、孫の悲鳴が心にささったためでしょう。母の涙は、自分の肉体の一部をもぎとられた思いのためでしょう。そして、父の祈りがありました。「心にきずをのこすな」と。
▼父は、ぽつりと私に語ってくれました。「私にとって人権とは『まき』のこれからの人生です」と。この四人家族に、輝く幸せがめぐりきますように、私はそっと祈っています。
 この作品は、広島県海田教育委員会編、人権啓発冊子『いのちのかがやき』(1996年)によります。
人権読本 じんけんの詩U(明石書店)編者 今野敏彦/さし絵 美馬須美子 から
 

2004.tagatown.jp